花屋 ゆず花 山口 豊さん
2021.02.22
くらしのレシピ
Let's walk with a flower

花屋 ゆず花 山口 豊さん

花と歩こう。花と暮らそう。
そんな提案のあるお花屋さん。

誰しもがもつストーリーに花を添えたい

花屋 ゆず花 山口 豊さん
「花屋ゆず花」の奥にはカフェが併設されており、上の階には人気の美容室とアイラッシュサロンが。このビルにやってくる人はまず、「ゆず花」の花とグリーンに迎えられます。

「桃栗三年、柿八年って言うでしょう?これには続きがあって、『柚子は大馬鹿18年』とも言われているんですよ。『柚子』を店名の由来にしているぼくたちも、時間をかけて信州に根をはっていきたいと思っているんです」

そう話すのは松本パルコのすぐ近くにある「花屋ゆず花」のオーナー・山口豊さん。2017年にオープンしたばかりのこの花屋は、人気美容室も入るビルの一階にあり、お店の左手奥へ進むとフレンチトーストがおいしいカフェにそのまま行くことができる空間設計。カフェに足を運ぶ人も、ビル上階の美容室へ行く人も、皆がこの花屋を横目に通っていきます。

花屋 ゆず花 山口 豊さん
「花屋ゆず花」のオーナー山口さん。店名には、じっくりゆっくり、そしてしっかりと愛されていきたいという願いが込められています。
花屋 ゆず花
松本市の伊勢町通りから少し入った場所に店を構える。ガラス張りの扉を開けば、心地よい香りと色鮮やかな花、グリーンがお迎えします。

「花は、人の人生を豊かにする。そう感じながらこの仕事をしています」
まっすぐな言葉とはうらはらなフワリとした空気をまとい、不思議な存在感を放つ山口さん。長野市で三人兄妹の真ん中として生まれ、幼い頃から自由にのびのびと育ちました。結果、「あなたは何をしても、どう生きても大丈夫」と両親に太鼓判を押されるほど、自分のペースを忘れない子どもに成長した山口さんは、高校時代の夏休みに飯田市のカーネーション農家にホームステイをする機会に恵まれます。はじめて花と向き合ったこの体験のあと、卒業後に大手花屋でのバイトをはじめ、花と植物の世界にどっぷりとはまっていきました。(ちなみにステイ先の農家とは花屋になったのちに再会し、この世界に入ったことを喜んでもらえたのだそう)

花束
秋をテーマにした花束。赤い実やグリーンを散らした花束が、とても素早く、かつ丁寧な職人技で形づくられました。
バック
オリジナルのショッピングバック。Let’s walk with a flower = 花を持って歩こう、と書かれたバッグに、帰りの足取りも弾みます。

現在ゆず花では、店頭での花と観葉植物の販売に加え、オフィスや飲食店などを演出する空間緑化や植栽の仕事にも力を入れています。植栽の仕事の際には、理想のオリーブの木を譲ってくれるという話を聞きつけて京都まで日帰りで取りに行ったこともあるという熱意ぶり。
「そのお客さんにはあのオリーブがピッタリだと思ったから、あるなら取りに行こう、と思って」
そう話す山口さんの言葉には、熱意を持って、自分の興味があることを掘り下げていくという、純粋でシンプルな思いがにじんでいます。

「絶対に、お客さんの相手を『作業』にしちゃいけない、と、スタッフとも話しています。ひとつひとつに意味をつけてあげて、ひとりひとりのストーリーをサポートしてあげる。花屋は技術職だけれど、同時にそういう仕事でもあると思うんです」

花のことを誰よりもわかるプロとして、訪れる人の暮らしに寄り添った提案をしたい。そんな山口さんの想いは、こんなエピソードにも現れます。
――前職の花屋での仕事中、ある一人の男性を接客した山口さん。「結婚記念日で妻に花を贈りたい。何色が好きかはよくわからないから、無難にまとめて欲しい」と注文する男性にすすめたのは、たった3本のピンクのバラでした。注文とは違う提案に男性は一瞬戸惑いますが、すぐに笑顔になったと言います。「話をするなかで、結婚3年目であること、そして式でのお色直しのドレスがピンクだったとわかったので、そういう提案をさせてもらいました。その花束は男性の予算を下回る値段だったから、目の前の商売としてはダメだったかもしれないんですけどね(笑)」結局この男性客は、その後山口さんが独立するまでの7年間、ことあるごとに山口さんのもとを訪れてくれたのだそう。「花は、僕たちの人生を豊かにしてくれると、やっぱりそう思うんです」山口さんは、そう言ってこの日一番嬉しそうに笑いました。

瀧澤さん
優しく花を扱う、店長の瀧澤さん。オープン当初から山口さんと一緒に働いており、やわらかな物腰の接客をしてくれます。
トルコギキョウ
松本産の美しいトルコギキョウ。実は松本市は、全国有数のトルコギキョウ生産地。ゆず花でも、5月の終わりから秋頃まで扱います。

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